2026/09/23 15:41

SUBTRACTIVE PAINT|削ることで生まれる、白と黒の3Dプリント植木鉢「Speckle INK」

色を重ねるのではなく、削ることで仕上げる。

ADV-FACTORYの新しい仕上げとして制作した、「Speckle INK」シリーズ

今回取り入れたのは、塗装した表面をあえて研ぎ落としていく「SUBTRACTIVE PAINT」という考え方です。

一般的な塗装では、下地の上から色を重ねながら完成へ近づけていきます。


それに対してSpeckle INKでは、白い3Dプリント造形に黒を入れ、その後、凸部に乗った黒い塗装を一つひとつ手作業で研ぎ落としていきます。

足して完成させるのではなく、引くことで表情をつくる。

そんな少し逆向きの工程から、この白と黒のモノトーンが生まれました。


凹部の黒と、研ぎ出した白

この植木鉢の表面には、細かな凹凸のテクスチャーを造形しています。

黒く塗装したあと、その表面を研磨すると、まず高い部分から白い下地が現れます。

さらに研ぎ進めていくと白い面積が少しずつ広がり、深く入り込んだ部分には黒が残っていく。

その結果、白い造形の中へ黒いインクが染み込んだような、不規則な模様が浮かび上がります。

遠くから見ると大胆なモノトーン。


近くで見ると、細かな凹凸の中に黒が入り込み、研磨した白との境界にはわずかな揺らぎがあります。

プリントした模様でも、最初から白黒の2色で造形したものでもありません。

立体的なテクスチャーと塗装、そして最後の研磨。

この3つが重なることで生まれる表情です。


一番面白いのは、研いでいる途中

実際に作っていて、個人的に一番好きなのがこの工程です。

最初は黒に覆われていた表面を研いでいくと、少しずつ下から白が現れてきます。

「ここまで白が出るのか」

「この部分は黒を残した方が面白そうだ」

そんなことを考えながら手を動かしていると、最初に頭の中で想像していた白と黒のバランスが、少しずつ実物になっていきます。



完成した瞬間というより、完成へ向かって表情が変わっていく途中が面白い。

今回この仕上げを作っていて、改めてそう感じました。

3Dプリンターで造形していると、どうしても「同じものを正確につくれる」という部分に目が向きます。

もちろん、それは3Dプリントの大きな魅力です。


でもADV-FACTORYでは、そこへあえて人の手による不確定な工程を加えてみたいと思っています。

デジタルで造形し、最後は手で仕上げる。

その組み合わせによって、3Dプリントだけでは生まれない質感をつくれないか。

Speckle INKは、そんな試みから生まれた仕上げでもあります。


同じものを作っても、まったく同じにはならない

研磨は一つひとつ手作業です。

そのため、同じ形状、同じ塗装、同じ工程で制作しても、黒の残り方や白との境界は少しずつ変わります。

ある個体では黒が大きくつながり、別の個体では細かな黒が点在する。

ほんの少し研ぐ量が違うだけでも、模様の印象は変わります。

最初は、この違いをどこまで揃えるべきか考えました。


でも作っていくうちに、むしろ完全には揃わないところが、この仕上げの良さなのではないかと思うようになりました。

工業製品のように完全に均一な仕上げではなく、一つひとつに少し違った表情がある。

3Dプリントというデジタルな製造方法と、手作業による偶然性。

一見すると反対に見える二つを組み合わせることで、Speckle INKらしい質感が生まれています。


植物を植えたときに、完成するデザイン


今回の白黒は、植木鉢単体での存在感だけを考えたものではありません。

グラキリスなどの塊根植物や、アガベ、多肉植物を植えたとき、植物の色や質感を邪魔しすぎず、それでも鉢そのものにしっかり存在感が残る。

そのバランスを意識しています。

白と黒だけなので色数は非常に少ない。


それでも不規則なSpeckle模様と立体的な表面によって、見る角度や光の当たり方で印象が変化します。

特にグラキリスのような自然な肌の質感を持つ植物と合わせると、植物の有機的なフォルムと、モノトーンの鉢とのコントラストがよりはっきりします。

シンプルな空間ではオブジェのように。

植物を植えれば、その植物を構成する一つのデザインとして。

「植物を入れるための容器」だけでは終わらない植木鉢を目指しました。


3Dプリントだからできる造形。その先へ。

ADV-FACTORYでは、3Dプリンターを使って植木鉢や植物にまつわるプロダクトを制作しています。

3Dプリントの魅力は、従来の製造方法では難しい複雑な凹凸や形状を比較的自由に造形できることです。

ただ、造形できること自体をゴールにはしたくありません。

プリント後に塗装したり、削ったり、質感を変えたり。

デジタルで作ったものへ手作業を重ねることで、3Dプリント植木鉢の表現には、まだかなり可能性があると感じています。


今回のSUBTRACTIVE PAINTも、その一つ。

黒く塗る。

そして、せっかく塗った黒を削る。

効率だけを考えれば、一工程増える仕上げです。

それでも、研ぎ進めるにつれて白が現れ、最後に想像していた模様が見えてくると、このひと手間を入れた意味を感じます。


Speckle INK

白い造形に、黒いインクが染み込んだような表情。

規則正しく並んだパターンではなく、黒と白が入り混じる不規則なモノトーン。

そして、一つひとつ手作業で研ぎ出すからこそ生まれる個体差。

それが「Speckle INK」です。


完成品だけを見ると白と黒のシンプルな植木鉢ですが、その表面には、3Dプリントによる造形、塗装、そして手作業による研磨という複数の工程が重なっています。

同じデザインから作っても、一つとして完全に同じ表情にはならない。

そのわずかな違いも含めて、楽しんでもらえたらと思っています。

SUBTRACTIVE PAINT — 色を足すのではなく、削ることでつくる。

ADV-FACTORYの新しいモノトーン表現です。